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Adieu et Bonjour ライナーノーツUpdate : 2021/01/07 Thu 00:53

アルバムAdieu et Bonjourは製作費を倹約するために、ライナーノーツの読物やブックレットが付属しませんので、このページをライナー代わりに読んでくださると幸いです。

追記:
下記よりPDFファイルをダウンロードできるようにしました。原寸でプリントして頂くとCDサイズになります。
ライナーノーツ(PDF)

1970年代中頃の高校生の時からの趣味でしたが、自分の演奏を多重録音して作品をいくつも残しています。それがライフワークになるのは、1990年にTASCAMの16chミキサー付き卓上型8chマルチトラック・カセットデッキを手に入れたのが事の始まりでした。まずは手始めに自身のバンジョー・ソロアルバムの製作に取り掛かりました。それは、1992年の春には完成し、SHOW BY BANJOのタイトルでリリースしました。後に、SHOW BY BANJOは米国Chicago Tribune紙でBEST 10ブルーグラス・アルバムに選出されるという栄誉をいただきました。

その勢いで、当時組んでいた営業バンドのデモテープなどの録音も行いましたが、大阪の中津というところにあった楽器リペア工房の一角を事務所にして製作をしないかというお誘いが、たしか1993年の春頃にあり、夏頃にはコンピュータやプリンタ一式と、前述のマルチトラッカーを持ち込み、リペア工房終業後の深夜に毎日コソコソと打ち込みや録音作業をしていました。仕事としては、関西ローカルなTVコマーシャルの音などいくつか作りました。当時新しく始めた、コンピュータを使ったカラオケ音源の打ち込み仕事は自宅でMIDI音源相手に格闘していましたが、中津の事務所では毎夜暇なので、マルチトラッカー相手に、当時大変珍しかったマカフェリ・ギターを弾いて、長年の夢だったDjango Reinhardtスタイルの演奏を録音していました。それはDjango没後40年のことでした。まだ日本ではDjango Reinhardtスタイルについての情報がほとんど無く、どんな弦をどんなピックで弾けば良いのかも分からず、MartinのブロンズLight弦を張って、FenderのMediumピックで弾くという、今では考えられない演奏を録音してました。

Django Reinhardtスタイルの録音がある程度曲数が溜まったところで、当時お世話になっていた、大阪の新進気鋭のちんどん屋さんの小林信之さんにお願いして、ちんどん仕事が終わった夜に事務所まで来てもらって、クラリネットの録音をしていただきました。それが、今回デジタルリミックスしてアルバムAdieu et Bonjourに収録した最初の10曲となりますが、1997年頃、アナログミックスしたものをCD-Rに焼いた私家盤をGypsy In Texasというタイトルで少数リリースしていました。

1995年、神戸に地震があり、大阪エリアでは製作も演奏仕事もかなりダメージを受けましたので、大阪の友人・知人には無言で、1996年1月に東京に移住してしまいました。東京移住後の5年間は基本的に音楽をせずに、コンピュータを使った製作やネットワークエンジニアみたいなことを勉強しながら、生活の足場みたいなところを築きました。それが2000年頃には悪い虫が湧いて、再び音楽活動をするようになりました。20〜30代の頃のように、お金のためになんでも演奏するというスタンスは既に無く、好きな演奏だけをするというポリシーで現在まで20年以上音楽を楽しんでいます。

2002年頃、5弦バンジョーで参加していたブルーグラス・バンドのリーダーが若い嫁さんを娶ることになったのですが、彼女はプロのバイオリニストでジプシー音楽に興味があるということだったので、一緒に新しくバンドを組むことになり、18歳の時からの夢であったDjango Reinhardtスタイルのバンドを始めました。そのバンドYellow Django Revivalは、メンバーの変遷があるものの、現在でも定期的にライブ演奏を重ねており、このジャンルでは国内現役最古参のバンドになりました。

Djangoスタイルのバンドを組みましたが、駆け出しのアマチュアバンドのようなコピー演奏をするのを避けて、戦前にDjangoやStephane Grappelliが演奏していたイディオム、つまり既存のジャズ曲とオリジナル曲を自分たちのスタイルで演奏するということに重きを置きました。そのために2003年頃は、50曲以上にも及ぶデモを、今度はコンピュータを使って録音しました。Django没後50年ということで、ようやく国内でもこのスタイルの音楽が認知され始めた頃です。今回のアルバムAdieu et Bonjourには、それらのデモからYellow Django Revivalでは手付かずの5曲をリミックスして収録しました。

2008年秋に、新宿アコギの会というF穴ギターばかりで古いジャズ曲を演奏するバンドに志願して加入したのをきっかけに、東京のトラッドジャズ人脈と繋がることができ、30代の大阪の頃以来のトラッドジャズ演奏を再開しました。それからは、Djangoスタイル、スイングスタイルと二本立てでライブ活動をしていましたが、2018年頃からニューオリンズ・スタイルのジャズバンドからも、4弦テナーバンジョーでお座敷が掛かるようになりました。かつて1980年代最初の駆け出しの頃に勉強して、他では全然役に立たなかったニューオリンズ・ジャズのイロハがまた日の目を見るとは思いませんでしたが、それも束の間で、コロナ禍にやられ、2021年1月現在、演奏活動は開店休業状態です。コロナ禍の下、有り余った時間とエネルギーを使って、自宅でできる何かを考えた時に思いついたのが、アルバムAdieu et Bonjourの製作でした。せっかくなので、再び関わるようになったニューオリンズ・ジャズからのアイデアをDjangoスタイルのギターに載せた2019年・2020年のデモを一曲ずつ収録しました。

1. Danson Avec Ma Guitare

1819年ウェーバー作のピアノ曲「舞踏への勧誘」をフレンチジャズに編曲しました。1930年代にGoodman楽団も同じ手法で自身のラジオ番組のテーマ曲にしていました。

2. Gypsy In Texas

旧アルバムのタイトル曲で、ミュゼット音楽風に作った僕のオリジナル曲です。旧アルバムのコンセプトは、1930年代にパリの楽団が米国テキサスを演奏旅行したらというものでした。

3. Texas Crapshooter

テキサス・フィドル曲をフレンチジャズに編曲しました。東欧からの移民が多かったテキサス方面では、故郷の音楽そっくりの楽曲が数多く伝承されています。欧州のポルカが里帰り?

4. It Had To Be You

古いジャズ小唄です。ジプシージャズ・バンドで演奏されることが多いです。

5. Let Me Call You Sweetheart

美しいメロディはアメリカの古いノベルティ・ソングです。元々がワルツであるため、ミュゼット風に編曲しました。

6. Shine

古いジャズ小唄です。御大Django Reinhardtの1936年の有名な録音の他、今でもジプシージャズ・バンドで演奏されることが多いです。多くのブルーグラス・ミュージシャンが感銘を受けたStephane GrappelliとDavid Grismanの共演ライブでのスリル感に満ちた演奏も素晴らしかったです。

7. Valse De Kentucky

古いブルーグラス曲にヒントを得て、ミュゼット風に演奏しました。旧アルバムには無かった拙いビオラをセカンド・コーラスにダビングしました。

8. After You’ve Gone

古いジャズ小唄です。御大Django Reinhardtの有名な1936年の録音の他、今でもジプシージャズ・バンドで演奏されることが多いです。ここではアップテンポで。

9. Tiger Rag

録音されたジャズ曲としては最も古い曲のひとつです。Django Reinhardtのバンドデビュー曲のひとつです。ギター、アコーディオン、クラリネットのアンサンブルというのは、1930〜40年代のスイングミュゼットバンドの特徴です。

10. East End Blues

サッチモの古いブルース曲にヒントを得てフレンチジャズとして演奏しました。旧アルバムではイントロのギターソロが巧くいかなかったために別のメロディが収められていますが、今回マザーテープにNGテイクを発見したので、デジタルリミックス技術で復活させて差し替えました。

11. That’s A Plenty

ジプシージャズではほとんど演奏されないレパートリーですが、元はかなり古いピアノ曲で、今日ではディキシージャズのスタンダードとしてよく演奏されます。トラッドジャズメンにはメモリ必須の曲です。

12. Get Out And Get Under The Moon

言わずと知れた、日本でも有名な「月光価千金」です。このテイクでは意表を突いてギターとピアノのデュオで演奏しました。

13. Montagnue Noir

ブルーグラス・ギター奏者必修のフラットピッキングの名曲、Black Mountain Ragというアメリカの古いフィドル曲を、フレンチなギターのブルースとして編曲しました。

14. Struttin’ With Some Barbecue

Django Reinhardtが憧れた、サッチモ率いるHot Fiveの名演をイメージして、弦楽器によるアンサンブルを重視しました。

15. Burgundy Street Blues

ニューオリンズ・ジャズのクラリネット奏者George Lewisの素晴らしいブルースを雰囲気を大切に演奏しました。Djangoスタイルのギターとトラディショナルなクラリネットの音使いの共通点を感じることができました。

16. Clarinet Marmalade

録音されたジャズ曲としては最も古い曲のひとつです。ディキシー・ジャズやニューオリンズ・ジャズのスタンダード曲です。バイオリンのピチカートソロを頑張ってみました。

17. Si Tu Vois Ma Mère

英訳すると「If You See My Mother」、Sidney Bechetの名曲を河野義彦さんのクラリネットとギターで演奏しました。下の動画で、このトラックをお聴きいただけます。

4月1日追記:
事業期間が終わりましたので、無料配布を終了いたしました。

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