Category :: Django Reinhardt

Marty GroszUpdate : 2006/12/21 Thu 00:42

最近はYouTubeなどという便利なサイトがあるおかげで、テレビを見なくなった人も多いのではないでしょうか?もっとも、うちでは10数年もテレビを見ない習慣なので、逆にYouTubeのおかげで仕事や趣味の時間が削られているような状況です。それはさておき、YouTubeのおかげで、今まで見たことの無い映像を見れる機会が増えて、特に歴史的ミュージシャンの演奏などを発見できると狂喜します。皆さんもいろいろ探しておられるでしょう。

それで、3年ほど前にこの人に「このギタリスト凄いよ!」と教えてもらったMarty Groszの映像を見つけましたので、練習を兼ねて貼り付けてみます。

ジャズ分野でのアコースティック・ギターの歴史は意外と古く、録音有史以前の20世紀初頭ジャズ黎明期にまで遡ります。その後、音響設備など夢のまた夢という時代でしたから、音量の制約で生ギターは音量のあるテナーバンジョーにその座を譲りました。それでも、1920年代にルイ・アームストロングのホット・ファイブに参加したジョニー・センシアなどはギターと同じネックが付いたギターバンジョーで、かなりギターぽい演奏をしていましたし、ラジオ放送が始まり録音技術も発達してきた1920年代後期には、エディ・ラングが発売されたばかりのGibson L-5を引っさげて、当時流行りのスイートなジャズばかりではなく、セミ・クラシックからブルースまで天才的な演奏をしていました。1930年代の終わりにチャーリー・クリスチャンが電気ギターでアドリブを取るまでは、ジャンゴ・ラインハルトという例外はあるものの、エディ・ラングの演奏スタイルがジャズ・ギターの模範であり、その時代にはフォロワーや亜流も随分登場しました。

このトピックで取り上げた1930年ベルリン生まれのマーティ・グロスは、そのエディ・ラングの流れの上にある人です。しかしながら、エディ・ラングのフォロワーというよりも、エディ・ラングの亜流として独特の調弦で魔法のようなソロを取った、カール・クレスのフォロワーじゃないかと思われます。映像から見て取れる左手のコードフォームから、グロスはクレスと同じように、6弦からBb・F・C・G・B・Dという風にギターの弦をチューニングしているからです。このチューニングは、高音部4本の弦がプレクトラム・バンジョーと同じで、低音部4本の弦がテナー・バンジョーの1オクターブと全音下という、ディキシーやトラッド・ジャズの4弦バンジョー弾きにとってはまことにありがたい調弦になっています。つまり、バンジョーが弾ければ、ソロだってリズムだってギターを簡単に弾けてしまうわけです。その上、低音部の最低音は通常のギターよりも5度以上も低いので、コードの響きが豊かになるだけでなく、ソロを弾く上でも面白いアプローチができます。前述のカール・クレスもそういった録音を残していますし、このマーティ・グロスも、例えばファッツ・ウォラーがピアノの弾き語りをするがごとく、自分の歌とともに絶妙なプレイを聴かせてくれます。

これから、YouTubeを利用して、このようなトピックをいくつか書いてみたいと考えています。乞うご期待。

▼ Comment form