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デジタル・ボーダーUpdate : 2005/03/03 Thu 01:32

デジタル・ボーダーは僕の造語ですが、その前にデジタル・ディバイドという言葉をご存知でしょうか。アメリカでは、貧困層が貧困ゆえにネットに触れることができないため、世の中の流れに付いて行けず、一種の社会からの隔離状態があり、これをデジタル・ディバイドと言うのだそうです。

日本でもデジタル・ディバイドはありますが、アメリカでいうデジタル・ディバイドとは少し意味が違います。日本の場合は、貧困よりも地域的・社会的要素が強く感じられます。確かに貧困の問題はアメリカ同様にありますが、それよりも、具体的には、知的教養を持たない人や高齢であるためにIT化から取り残されている人、IT嫌いな頑固な人が、社会から隔離されつつあることを、日本のデジタル・ディバイドと呼んで良さそうです。

そういった現状を鑑みて、森前首相が急激なIT化を国家を揚げて推し進めました。老人向けのIT講習会が全国通津浦々で賑々しく開かれたことが記憶に新しいです。ところが、IT講習会とは名ばかりで、メールとブラウザ、それにMicrosoft Officeの使い方のレクチャーを一通り受けるだけの催しでした。実際に、そういったIT講習会に通った人は、自宅にコンピュータが無い人が多く、有効に利用する機会も無く、ただ講習会に行っただけで、コンピュータ操作のかけらも覚えられなかったと考えられます。

ところがです。IT産業はこれでもかこれでもかと、「ブロードバンド」を錦の御旗に、マスコミを使って一般市民を煽るものですから、インターネットを利用していないということが、一種のひけ目に感じるご時世になってしまったのです。結果、前述のIT講習会に行って何も覚えてこなかったような人やセレブと呼ばれる女性層までが、プロバイダのアカウントを持つことになりました。出典は忘れましたが、今や都会では、10軒に8軒はネットに繋がっているそうです。

数年前よりもコンピュータの操作が簡単になったのは事実です。OSメーカーやソフトハウスが頑張って、初心者に敷居の低い操作感をOSに加えています。ですから、ITスキルのほとんど無い中高年や女性方もネットに接続する所までは簡単にできるようになりました。こういう方々を僕は「デジタル・ボーダー」という造語で呼ばせてもらいます。ディバイドとは分け隔てることですが、ボーダーは境界線を指しています。ディバイドされた内側でも外側でもない人達は境界線上に居るというイメージです。デジタル・ボーダーにとっての問題は、ネットへの接続ではなく、その次のネットの利用です。

特に日本人は、テレビや雑誌など、与えられた情報を見て楽しむということが当たり前になっていますが、インターネットでは、情報は自分で探すもの、あるいは、情報は自分が与えるもの、というのが本来の形です。サービスを売る側のインフラ産業は、映画も見れる、音楽も聴ける、といった従来のメディアと同じ利用法のみを売り物として宣伝しますから、デジタル・ボーダーの皆さんは、インターネットでの情報の共有の尊さを理解できていない人が多いようです。

閑話休題、ネットには掲示板なるものが、もうだいぶ昔からあります。掲示板は、Webサーバのシステムに実装されているCGI(コモンゲートウェイインタフェース)という仕組みを使って設置されています。僕がサイトを開いた9年前には、一部のスキルある人達はすでにこの仕組みを使って掲示板を運用していました。掲示板という単語は日本語ですが、これはBBSを電子掲示板システムと訳したところから来ています。掲示板でイメージするのは、紙に書いた情報が無作為に貼られているアレですが、ネットの掲示板はそうではなく、特に日本ではコミュニケーションの場として利用されることが多いです。また、個人の日記を書く場として運用している人も多いです。使い方はいろいろですが、独自のネット文化を作っていると言えます。日記利用に関しては、昨今ではBLOGというものが流行し、掲示板はその座を譲った恰好になっています。今さら掲示板を個人日記にしている人は、ちょっと格好悪いかもしれません。

話を戻して、そういったネット掲示板文化は、長年のインターネット利用の中で必然性を持って確立していると言えます。現在では無料の掲示板システムのレンタルがいくらでもありますから、ホームページを作るスキルが無くても掲示板なら努力しなくても持てます。「ホームページができました」というメールを貰って見に行くと、掲示板しか無かったということは少なくありません。特にここでいうデジタル・ボーダーな皆さんにその傾向があるのではないでしょうか。そういう方々は、長年ネットワーカーによって培われた、掲示板上での社交スタイルを理解されていないことも多いです。また、掲示板のひとつも自分で持っていないとネット利用者として恥ずかしいと考えて、必然性無く運用する人も多いと感じます。身内・知り合いだけで楽しむなら、同報メールで充分です。ネット上に公開するのですから、通りがかりの人やいわゆるROMといった物言わぬ第三者が読んでいることを前提に、情報を掲示していただきたいものです。
こういったデジタル・ボーダーな方々をターゲットに、ソーシャルコミュニケーションサイトなるものがあるのだと僕は考えます。身に覚えがある人は、是非お試しください。常に誰かに見られているという、ネットの社交が徐々に分かると思います。

▼ Comments for this post

From : こでら   Date : 2005/03/04 01:07

 デジタル・ボーダーですか。 なるほどという分類ですね。
 うちの会社のある後輩が言った言葉を思い出しました。
 Mac miniが発売になったときに、
「うわーかわいいですね、欲しいなぁ。 でもこれを買って僕はなにをしたらいいんでしょう。」
 勝手に考えろという感じですが、でもいい得て妙だと思いますね。
 パソコンというのは、紙と鉛筆で出来ることしか結局出来ないと僕は思っています。
 いくら21インチのLCDとタブレットとスキャナをそろえていても、さらさらとデッサンが紙に書ける人にはかないませんし、どんなHTMLライタもコンテンツまでは書いてくれません。
 
 僕は絵がかけませんので、HPには駄文ばかり載せていますが、本当は「まじょるかクン」のような漫画がかければなぁとは思っております。

From : Hikaru   Date : 2005/03/04 01:59

こでら様
さらさらとデッサンが紙に書ける人が、21インチのLCDとタブレットとスキャナを携えて使いこなしたら、これは凄いでしょ。ミュージシャンがコンピュータで音源制作するのもそれですね。仰るように所詮道具なのですから、道具を使える人が使ってこそ意味があると思います。
Mac miniに限らず、マックは道具である以上に所有する喜びが強いと思います。ほんの少しのクリエイタと多数の素人がマックユーザです。PCの場合は、3割がサラリーマンとその家族、1割がヲタク、残りがデジタル・ボーダーじゃないでしょうか。
一応、僕は、コンテンツもHTMLソースも書いて、CGIソースも書き、サーバやサイト構築もやってます。せこい商売ですけど…。

From : 最新、アンケートによると   Date : 2005/08/31 23:32

アメリカの貧困層拡大

米国勢調査局の
 「04年米所得調査」によると(毎日)
 http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/news/200508…

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