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フリッツ・リッチモンド・トリビュート終わりましたUpdate : 2006/04/04 Tue 00:41

少し前のトピックでお知らせしていました、コンサートへの出演を、4月2日、無事果たしました。ジョン・セバスチャン、ジム・クエスキン、ジェフ・マルダーというビッグなミュージシャンが一同に会した素晴らしいイベントでした。まだ、感動醒めやみません。感想など書いてみましょう。

実は、そのステージのためのリハーサルが前々日に都内某所にて行われました。ジョン・セバスチャン、ジム・クエスキン、ジェフ・マルダーは旅の疲れも見せずに、その場での綿密な打ち合わせの下、彼ら自身も初めてだというコラボレーションの準備を進めて行きました。特に、コード進行の細かいチェックやテンポの確認など、アチラ流のリハに参加できたのは収穫でした。僕らは、僕がバンジョー、Taro君がマンドリン、次郎さんがフィドルで演奏に加わるということを聞いていましたが、どういう曲をやるのかは、そのリハまで分かりませんでした。結局、ジム・クエスキンがリードを取るジャグバンド風の3曲にバックを付けることになりました。

また、事前にオフレコで聞いてはいたのですが、あの細野晴臣氏がこのメンバーにベースで加わったのは、本当に驚きでした。有名な1、2曲を除いて細野氏は曲をご存知無かったようですが、本番までには完全にコード進行を覚えておられたのは、さすがだと思いました。ベースの他にも、ドイツの学校教育用だというマリンバ(これがコンパクトで良い音がしました)で、かなりの曲に参加されました。

日曜日、本番の日、午後からステージ・リハがありました。リハと言ってもサウンド・チェックのようなもので、曲の出だしとサウンドバランスを確認するだけでした。リハの後で、懐かしい人にお会いできました。神戸の春待ちファミリーバンドというジャグバンドのリーダー、澤村さん、通称「社長」の顔を10年ぶりくらいで見つけました。前日の横浜ジャグバンドフェスのために東上されたということでしたが、他のメンバーはトンボ帰りで、澤村さんだけ所用で残ったついでにいらしたのだとか。澤村さんには、神戸の地震の後に何度か声を掛けていただき、春待ちファミリーバンドと演奏をご一緒させていただいたことがありました。なつかしいです。

18時の開場からずいぶん時間が経っても入場が終了せず、結局1000人近くの来場が有ったのではないでしょうか。スシヅメ状態で熱気溢れる会場になりました。最前列には知った顔がいくつもありました。
さて、ジョン・セバスチャン、ジム・クエスキン、ジェフ・マルダー+細野氏の素晴らしいコラボレーションは、これからいくつものBLOGでレポートがあると思いますので、このBLOGならではの、他のことを書きましょう。

本場アメリカ以上に、ジャグバンド・ミュージックが日本で盛んだと言われています。今回のイベントは亡きフリッツ・リッチモンドが製作半ばだった、ジャグバンド・ミュージックのドキュメンタリーを完成させるために日本での取材を敢行しようというのが最初の目的であり、その製作費を援助するために今回のイベントが行われたわけです。ですから、前日のジャグバンドフェスの取材がメインだったようです。そのジャグバンドフェスも盛況だったとのことと聞いています。

その日本のジャグバンドですが、(僕だけが感じているだけかもしれませんが、)なぜか演芸のボーイズ系の匂いが強いと思うのです。前述の春待ちバンドもそうですし、最近の若い人達もその傾向にあります。それ自体は日本式のやり方だと思いますので、僕ごときがコメントすることではないのですが、僕らブルーグラス・ミュージシャンのストイックさに比べると、とても適当で、或る種のうらやましささえ感じます。実際に僕がそういうボーイズ流儀のスタイルでブルーグラスやジャズを演奏をすることは、これからもまず無いだろうと思いますが、ファンをたくさん獲得するためのひとつの方法ですから、ブルーグラス畑の人も見習うと良いでしょう。しかしながら、例えば、リバイバル物ですが往年のジム・クエスキン・ジャグバンドの特定の演奏や、さらに戦前の泥臭いジャグバンドなど、本場のジャグバンドを聴いてジャグバンド・ミュージックの印象を頭に擦り込ん来た身としては、日本のボーイズ系ジャグバンド・スタイルには、かなりの違和感を覚えることは事実です。(あきれたぼういずみたいな演芸畑は別です)

それで、びっくりしたのは、今回北陸からゲストでやってきたOld South Jug Browersという12人編成の若いジャグバンドです。数曲をコンサートで聴かせてくれましたが、僕が感じていた前述の日本のジャグバンドのサウンドでは無かったのです。戦前風の、言わば、ジャズミュージシャンじゃないけどなんとかジャズしたい黒人達の泥臭い演奏、というような本場ぽいジャグバンドサウンドでした。ボーイズっぽいノリは全員で揃えたコックの衣装くらいのもので、彼らが出すサウンドは、僕の脳みそにインプットされたジャグバンドの音だったのですから、これはうれしかった。ブルーグラス・マンドリン奏者のTaro君は彼らの演奏を聴いて、大学のブルーグラス・サークルでやっているような稚拙な演奏と言ってたけど、本当は、アレはアレで本物に近いのですよ。現代のブルーグラスを聴く物差しでルーツ・ミュージックを量るのは、モダン・ジャズしか聴かない人がニューオリンズ・ジャズを語るようなものですね。若気の至りですな。
もうひとつのゲストバンド、マッド・ワースは重鎮Mooney氏が率いる名目とも日本を代表するジャグバンドです。こちらは、ベテランですから、若い人みたいに度を過ぎたボーイズ風はほとんど露見せず、どちらかと言えば、日本の70年代フォークやブルースの香りがして、年相応の落ち着いた渋い音を聴かせてくれました。また、ジャグバンド・ミュージックへの愛も先の北陸のバンド同様に強く感じさせてくれました。

普段、僕なんかがあまり接点の無いジャグバンド・ミュージックに久しぶりに触れられる一時でした。このイベントの末席に僕を加えてくださった主催者にお礼を申し上げます。

▼ Comments for this post

From : moccho   Date : 2006/04/05 10:17

はじめまして、moccho(ルーツな日記)と申します。トラックバックありがとうございました。
Hikaruさんは出演されていたんですね。
素晴らしいコンサートをありがとうございました。
あの夜はしみじみと「本当に音楽が好きで良かった」と思えるような、そんな幸せな夜になりました。
実は私、Hikaruさんのサイトは、以前にも度々除かせてもらった事があるんです。
当サイトからブルーグラスについて色々と勉強させて頂きました。
初心者にも分かりやすい言葉で書いてくださっているので助かります。
今後もまた宜しくお願いいたします。
私は残念ながらジム・クウェスキンの単独公演には行けませんので、
出来れば、当日の様子など報告してくださることを楽しみにしています。

From : Buffalo Records Blog   Date : 2006/04/05 12:22

Fritz Richmond Tribute

All I can say about last night’s show is that it will DEFINITELY be on a LOT of …

From : Hikaru   Date : 2006/04/08 01:01

moccho様、コメント有り難うございます。
僕も、セバスチャンの生歌がまた聴けたということで感激しました。まして、同じステージに並んだのは夢心地でした。
さて、もう今日ですが、ジム・クエスキンの今回の日本ツアーの最終日、再びジョイントさせていただきます。さきほど電話で曲目を教えてもらったのですが、今までやったことの無い曲も多く、現場で教えてもらわなければなりません。バンジョーよりもギターを期待しているようなことを言ってましたので、ちょっと緊張です。
ではまた、ライブが終わりましたら報告を書きます。

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