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表題の映画(原題はThe Triplets Of Belleville)を見てきました。
4カ国合作のこのアニメーション映画は、近頃流行のCGに頼ることなく、ヨーロッパ流の地味な演出が見事でした。特に、モンティ・パイソンにも繋がるようなナンセンスと、フランス映画独特のシニカルさ、カナダのパロディ精神がうまくミックスされ、アニメ大国の日本やアメリカとは違う路線で、大人の鑑賞に耐えうる作品となっていました。ベルヴィルという架空の都市をモチーフとして、アメリカやニューヨークの退廃加減を皮肉っているだろうと、ストーリーに見え隠れします。そのせいか、優れた作品であるにも関わらず、映画祭や各賞では、アメリカン・アニメに遅れを取っていると考えることはおかしいでしょうか。
あらすじは、皆さん自身で観劇して楽しんでもらうか、専門サイトに譲るとして、このサイトでは、やはり音楽に言及しておかなければならないでしょう。
ストーリーの軸がツール・ド・フランスという自転車レースということもあって、全体にフランスぽい音楽が採用されています。特に、古き良きフランスの音楽という色が濃いです。準主役の三つ子は、戦前にショービジネスでアイドルだったコーラスグループなんですが、これはボスエル・シスターズやアンドリュー・シスターズを彷彿とさせます。彼女達のグループ名がThe Triplets Of Bellevilleで、これがこの映画の原題となっています。彼女達のヒット曲がBelleville Rendezvousという曲で、映画の中でアレンジを変え、何度も使われます。
そして主題歌は、エンディングのスタッフ・スクロールで流れる同名曲でしょう。この曲のサビはThe Triplets Of BellevilleのBelleville Rendezvousがそのまま使われています。面白いことにジプシージャズ風味の打ち込みポップスとなっています。あとは、ミュゼットやシャンソン風の曲や、ジャンゴ・ラインハルトの楽曲のテーマからヒントを得たと思われるような旋律を持った曲が多いです。
映画冒頭で、戦前のベルヴィルの劇場に若きThe Triplets Of Bellevilleが出演しているカットがありますが、その中で、ジョセフィン・ベイカーやフレッド・アステアを思わせる(というよりそのままなんですが…)ステージがあり、なんとオケピットの伴奏では、ジャンゴ・ラインハルトが二本指でソロを取るアニメーションも見ることができます。短いカットですが、ジャンゴ・ファンの人は話の種に見ておいても損は無いでしょう。
その他、ド・ゴール大統領と思われる人物がテレビで演説していました。名前を失念しましたが、マイヨジョーヌ(黄色の自転車ジャージ=チャンピオン・ジャージ)を着てツールで優勝するレーサーは実在の選手でしょう。細かいところに、いろいろ有名人をアニメ化して登場させているようです。最初の方で主人公が見るスクラップブックには、コッピなど往年の名選手と思われる写真が貼ってあるように見えました。ロードレーサー・マシンのスペックも1960年代最後の頃の感じで、スタンディングで坂を登る動きやダウンヒルでクラウチングする姿は、自転車ファンの目にも嘘の無い描写でした。きっと有名選手が何人も描かれていることでしょう。
日本の宮崎某やアメリカのピクサーがいくら頑張っても、このような作品は今後も作れないでしょう。大変気に入りました。
私も今日観て来ました。絵は少し暗いけれど全体的に美しいと感じました。強烈にデフォメルメされた街並みや登場人物、キャラの立ちまくったお婆さん達の動きに圧倒されました。犬は乳牛みたいだし、ギター弾きの手はミッキーマウスだし、マフィアのボスは手塚○虫みたいだし、それに蛙をあんな風に食べるなんて… ゴキブリやトイレが汚いのはNG !
お目当ての音楽は20世紀始め頃の米国の流行音楽とか南仏やカナダのトラッド風なものが出て来て興味深かったです。
面白かったでしょ?大人の鑑賞に堪えるアニメだと思いました。逆に、子供達が見ると、どういう解釈をするのだろうか、興味があります。
主題歌の歌詞は、とても比喩的・哲学的なんですが、あれも一種のアメリカ批判なのではないかと思いました。