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ジプシージャズの起源(1)Update : 2016/09/26 Mon 21:55

ジプシージャズの創始者として、Django ReinhardtやStephane Grappelliの名前を挙げる人が居ますが、それは大間違いだということをあらためてここに書いておきます。

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Djangoがジプシー出身のジャズ・ギタリストであるというのは間違いありませんが、早くても1980年代終わり頃までにジプシージャズという括りで呼ばれる音楽ジャンルはありませんでした。Djangoは1953年に亡くなっていますから、没後30年経ってもそんなジャンルは存在しなかったのです。Stephane Grappelliに至っては、ご存知のようにジプシー出身でもありません。

では、ジプシージャズとは何か?に対しての答えを、仁義上、僕は書かなくてはなりません。

Django ReinhardtとStephane Grappelliがギターとバイオリン、コントラバスだけで一緒に演奏した1934年〜1939年あたりと再会再演した1946年〜1949年の録音をネタに、1980年代終わり頃から出現した(主に)ジプシーの若者たちのバンドでカバー〜フォローした音楽、あるいはその発展形というのが、解答です。

聴けば分かりますが、現代のジプシージャズのバンドの多くは、元々アコーディオンで演奏されたミュゼット音楽や、8ビートのオリジナル曲、映画音楽などもレパートリーにしています。ジャズ曲も演奏しますが、たぶん元のジャズ曲を知らないで演っているのではないかというような演奏になっています。対して、彼らがお手本としたDjango ReinhardtとStephane Grappelliはジャズしか演奏しませんでしたから、お分かりのように、似て非なる音楽になっています。

1934年からDjango ReinhardtとStephane Grappelliはコンビを組んでフランスホットクラブ五重奏団で弦楽器だけによるジャズを演奏しました。1939年渡英ツアー中に欧州大戦が勃発し、Djangoはすぐに帰仏しましたがStephaneは英国に居残り、戦後1946年まで一緒に演奏することはありませんでした。1939年を最後に彼らの弦楽器だけによるジャズ演奏は一旦終焉を迎えたことになります。(戦後1946、47、49年にメンバーが違うリユニオンはありました。)

その1939年を境に、主に欧州ですが、中立国の南米を含めてDjangoとStephaneの弦楽器だけによるジャズ演奏がフォローされ始めます。(もちろん、そこにはジプシー出身者は介在していませんし、ジプシージャズと呼ばれたこともありません。)

バイオリンのEmil Iwring率いるSvenska Hotkvintetten、1940年1月23日ストックホルムでの録音。100%スカンジナビア産のメンバーです。

こちらは、バイオリンのArild IversenとギターのRobert Normannが率いるノルウェーのグループString Swing、1940年9月12日オスロでの録音。

こちらは、イタリ、ミラノのQuintetto Ritmico di Milano、1942年11月21日の録音。

一方、スイスのチューリヒでは。
Swingtet Jerry Thomasの1942年10月12日の録音。ギターは1937年にDjangoのバックでリズムを弾いたこともある、Marcel Bianchi。

南米チリ、サンチャゴのQuinteto Swing Hot de Chile、1943年の録音。

Quinteto del Hot Club de Francia、1944年9月13日アルゼンチン、ブエノスアイレスでの録音。リーダーのベースマンLouis Volaはフランスホットクラブ五重奏団のリーダーですが、戦時疎開で南米に逃げてきました。

バトル・オブ・ブリテンのさなか、1941年のロンドン、ギターはJack Llewellyn。

以上の演奏にはジプシー出身者が入ってません。ですからジプシージャズではありませんし、そんな呼び方も当時はありませんでした。ジャズ演奏の一形態に過ぎません。ジプシージャズという呼び方やジャンルの括りは戦後、ついこの30年位前から言うようになったことで、これらのジャズ演奏とは似て非なるものと思います。

1930〜40年代、世界のいろいろなところに少し出現したこの手の弦楽器によるホットジャズ、仮にホットクラブ・スタイルとでも名づけても良いと思いますが、Django & Stephaneの演奏も含めて、それらは1920年代終わりのニューヨークにそのルーツを見つけることができると思います。
Joe Venuti and his Blue Fourの1928年の録音。

続く!

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