My Own Musical Instruments

Saga “Django Jazz Guitar BM-500” (mid 80’s)

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80年代にSAGAが発売していたマカフェリ・レプリカ、シリーズ中の最高級品です。発売と同時に入手し、ジャズバンドでの演奏にバンジョーと持ち替えでよく持って行きました。

SAGAのマカフェリギター・ラインアップは、マリオ・マカフェリ氏監修の下、当時倒産したばかりの春日楽器の工房で作っていたと聞いています。(春日楽器のギターやバンジョーは国産としては非常に良くできた楽器で、倒産が残念がられていました。ライバルの東海楽器も数年後倒産しました。)さすが春日で作ったギターだけあって、当時としては画期的なセルマーのレプリカで、とても高級感があるように感じたのですが、Dupontなど外国製のしっかりしたレプリカを知れば知るほど、SAGAのマカフェリの中途半端さに落胆したのは、僕だけではないでしょう。そして、弾き比べると、そのサウンドもしょぼいことが分かりました。デザインはともかくとして、音が悪い原因は、マスプロの国産ギター全てがそうであるように、ポリウレタン塗装というのが良くないわけです。しかも悪いことに、メーカーは何を考えていたのか、表板のブレーシング(力木)にローズウッドを使うという愚かな設計をしました。(本来は表板と同じ材料を使うものです。)カッタウェイのところを上手に曲げる技術が無かったのか、側板も裏板も単板です。(マカフェリギターは裏横が合板が普通。)これでは、ちゃんと鳴るわけはありません。

そんな楽器でも他に選択肢が無かった時代には、かなりの愛着を持ってアルバム制作にも使用しました。東京に来る前、まだ20世紀末、ジプシージャズ・プレイヤーが国内にまだ見当たらない頃でしたが、右のアルバムを大阪の事務所で録音しました。

1990年のStephane Grappelli来日時には楽屋まで押しかけてこのギターに触ってもらった上、ケースにサインをいただきました。他人に売ることのできない大事な宝物となりました。

2000年の或る日の夜中、大阪からアコーディオンとギターの漫才コンビが拙宅に急に投宿した折、宿代の代わりに何曲か演奏をしてもらったことがあります。僕は上京以来数年演奏をしていなかった頃ですが、その時、数年ぶりにこの楽器を出して来て数曲一緒に演奏しました。しかし、なんか鳴りがおかしいのでよく見ると、表板のエンドのところから10cm以上割れ目を見つけました。その時はさして必要無かった時期ですのでスルーしましたが、しばらくしてこの楽器を弾く必要に迫られ、表板の張替えを親切なルシアに外注することにしました。

張り直した表板の材質はシダー単板で、ラッカー塗装(ツヤ有り)ですから、明るく大きな音が出るようになりました。(スプルースはドライな音、シダーは明るい音というのが僕の印象です。)この修理で、Dupontや他のフランス製レプリカと弾き比べても遜色のないサウンドになりました。他にも、オリジナルの仕様の大部分を改造・改良しています。

大阪の漫才コンビが拙宅に来なければこの楽器の復活、強いては僕のジャズ演奏への復帰も無かったと思います。感謝せざるを得ません。

様々な改修を受けたこのギターは、2003年のDjango Reinhardt没後50年を記念したMaccaferhythmというライブアルバムの録音に音を残しています。我が家では貴重な単板のマカフェリギターです。

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