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「ジャンゴの日」というトピックでも書きましたが、今から10年前にはDjango Reinhardt没後50年ということで、本邦においてもDjango Reinhardtの音楽やフォロワーの演奏するジプシージャズが人気を博す所となりました。
それで、日本でもいよいよ、ジプシージャズについて、ファンが正当な評価をしながら演奏家のリスペクトを受け止める体勢ができたか、と言うと、まだまだ時期尚早でした。特に「フォロワーの演奏するジプシージャズ」のみが評価され、「ジャンゴの弾いたジャズ」は無視されたような格好でした。ファンもプレイヤーも、ジプシージャズの祖としてのジャンゴへのリスペクトはありますが、ジャンゴの残した演奏に対しての評価がまともに行われたか甚だ疑問です。
同じ理由だと思いますが、ジャンゴの演奏から演奏方法を学ぶのではなく、フォロワーの演奏をお手本に入門するプレイヤーが後を絶ちません。ジャンゴよりフォロワーの方が遥かに高度な演奏ですし、古臭いモノラル録音のジャズ演奏よりも、たまに8ビートの混じる現代のジプシージャズの方が入門者にはとっつきやすいのでしょう。なので、ジャズ演奏の一つの流派(方法論)としてジャンゴのお作法でギターを弾くのではなく、完全に独立したジプシージャズというジャンルの上でギターを弾くという感覚なのでしょう。裾野を広げるには良かったとは思います。ただ、若い人の中には、自分はマヌーシュのギタリストだという人も居て、なんか気恥ずかしい気持ちにもなります。(せめて、ジャズ・マヌーシュのギタリストと言って欲しい!ハードディスクのことを「ハード」というおっさんと同じレベルの教養では悲しい。。。)
そんなこんなですが、没後60年の記念ライブは、5月16日、千客万来の中で無事に終えることができました。僕ら自身もジャンゴのフォロワーですので、既存フォロワーのコピーではなく、ジャンゴのジャズをリスペクトした日本人の弦楽ジャズの演奏を続けていこうと思います。
それからまたひと月経って、ジプシージャズナイトという企画ライブに、Gypsy Sheiksという日米英混成バンドで出演しました。Gypsy Sheiksのメンバーはそれぞれジプシージャズ系統のバンドで演奏しているのですが、Gypsy Sheiksは基本的にジプシージャズのお作法ではなくアメリカ式のジャズを演奏するバンドなので、ライブ前にはAWAY感満々でした。
ところが、他の2つの出演バンドも予想に反して、僕が想定するジプシージャズじゃなかったのです。両者ともマカフェリギターを使っているものの、1つは日本語の唄がメインでとてもハッピーな演奏をしていましたし、もうひとつはアコーディオンとギターのデュオで、ジャズとは趣の違うかなり高尚なインプロヴァイズをしていました。そして、僕らGypsy Sheiksです。ジプシージャズナイトと冠が付いていましたので、フレンチでマヌーシュな演奏を期待するファンが来店していたとしたら、まったく3バンドとも厚顔無恥でしたね。でもファンもプレイヤーもまったく臆すること無くその場を楽しんでいました。
それで、僕の結論というか、所感なのですが、この10年で、ファンやプレイヤーのジプシージャズに対する意識が変わったのではないかと思いました。世間では、ネオロカとかオルタナという括りでアメリカンミュージックのフェイクを演奏するジャンルが若い人に支持されているようなんですが、今や日本人が演奏するジプシージャズもジプシージャズのフェイクなんだなということです。これは、歓迎したい風潮です。フォロワーのコピーを中途半端にやるより、全然良いです。応援しますので、どんどんやってください。おじさん達は、「ジャズ」を演ります。