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大学で理系に行った人なら知っているはずですが、金属(に限りませんが・・)には硬度というものがあって、硬度が違う金属同士を力をかけて接触させると、硬度が小さい方は接触面が変形するという当たり前の事柄があります。
ギターや他の弦楽器には金属の弦を張るものが多くあります。弦の硬度より大きい硬度を持ったピック等で弾くと弦が変形し、やがては調弦が合いにくくなったり切れやすくなったりすることを、前述の理由で考慮しなければなりません。
一般にスチール弦(鉄弦)と言われるように、鉄を主な原料とした鋼線というのがその素材です。クロームモリブデンとの合金であるクロモリ鋼は自転車のフレームなどによく利用されて硬度がかなり高いのですが、さすがに楽器の弦に使わず、硬度の高い弦としてはステンレス素材のものが知られています。しかしながら一般的なスチール弦はステンレス鋼ではありません。その硬度はアルミ合金やチタン合金とほぼ同じようですので、アルミやチタンのピックで弾いても、すぐにはそれほどの弦のダメージは見つけられないでしょう。
問題は巻き弦と呼ばれる低音部に使う弦です。アコースティックギターでよく使われる巻き弦は、細い真鍮(黄銅/ブロンズ)の線をスチール弦に巻きつけたものです。真鍮はアルミやチタンに較べて硬度が同程度以下なので、アルミやチタンのピックで弾くと、短い時間で弦のダメージを目視できるようになります。銅の成分が多めの少し色が赤いフォスパーブロンズ弦はさらに硬度が低いので、ダメージはもっと大きくなります。あるいは、エレクトリックギター用として一般的な、スチール弦に鉄線を巻いた弦であればダメージは少ないでしょう。さらに、クロームメッキされた鉄線を巻きに使っているような弦であれば、もっとダメージは少なくなると考えられます。
さて、ジプシージャズギター(マカフェリギター)で使う鉄弦の巻線は、銀メッキした銅線をスチール弦に巻いています。銀の硬度はアルミやチタンの約20%、銅の硬度はアルミやチタンの約50%ですので、アルミやチタンのピックで弾くと見ている間に弦のダメージが問題化します。つまり、弦のことを考えると、アルミやチタンのピックで弾いてはいけないということになります。
最近、アルミやチタンのピックを商品開発して販売するメーカーが増えていますが、上記理由で、アコースティックギターや、特にジプシージャズギター(マカフェリギター)でそれらを使うことは避けたほうが良いと思います。個人的な意見を言わせていただければ、そういう理由があるにも関わらず、アコースティックギター用あるいは特にジプシージャズギター用としてそれを開発・販売するメーカーは、楽器のこと、音楽のことを全く存じてないのでは無いかと思います。工場の職人さんには責任はありませんが、商品開発担当者は物理で言う硬度という知識も無いかもしれません。大変無責任であり、ユーザは昨日今日の新参メーカーを信用しないことです。
生ギター用のピックは、金属以外の樹脂素材や自然素材が良いでしょう。