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1980年代以降に出現した欧州のジプシーの若者たちのバンドが、1930年代のDjango ReinhardtとStephane Grappelliのジャズ演奏をお手本にして演奏しているのが、ジプシージャズであると本サイトでは大きく括りました。(此処と此処と此処に書きました。)
では、1930年代のDjango ReinhardtとStephane Grappelliは、どんな音楽を聴いてあのような演奏をしたのかというと、多くは当時のアメリカのジャズ、今で言うトラッドジャズなのですが、とりわけ、バイオリンとギターのコンビということで、間違いなくJoe VenutiとEddie Langの演奏にヒントを得ているはずです。
Joe Venuti and his Blue Four、1930年11月12日ニューヨーク録音
インドネシアでもアルゼンチンでも世界中にバイオリンとギターの音楽は存在していて、DjangoとStephaneはたまたま欧州でニューヨークのジャズからインスパイアされましたが、アメリカ国内にはそれこそ数えきれないくらいのバイオリン+ギターのチームがありましたので、VenutiとLangからインスパイアされてジャズ的な演奏を行ったチームが数多くあります。それは現在進行形でもあるので、欧州のジプシージャズとは違う系で発展しているもうひとつの弦楽器ジャズだと言えます。もちろんそれらはお里も違うのでジプシージャズではありませんが、いくつか紹介してみましょう。
かなり現在のジプシージャズに近い演奏やルーツと感じられる演奏が、1960年代にフランスで行われていたということ、しかしながら、1980年代終わり頃まで、ジプシージャズという言葉も音楽ジャンルの呼称も無かったということを、前回書きました。
Django ReinhardtとStephane Grappelliが最後に一緒に演奏したのは1949年2月頃ですが、その後1953年5月にDjangoが没してから、フランス国内で戦前のDjango & Stephane風の演奏を行ったのは、Ferret兄弟、Joseph Reinhardt、Henri Crolla達くらいで、Henri Crolla以外はミュゼット音楽やジプシー旋律を取り込み、Django & Stephaneのホットジャズ的な要素は薄れました。
しかしながら驚くべきことに、お隣の英国ではDjango没後数年で、往年のフランスホットクラブ五重奏団の再現と思われるような演奏をするグループが現れます。戦前、フランスホットクラブ五重奏団は英国ツアーを何度も行っていましたから、ファンや在野のフォロワーがかなり居たのだと考えられます。
ジプシージャズの創始者として、Django ReinhardtやStephane Grappelliの名前を挙げる人が居ますが、それは大間違いだということを、前回書きました。
1980年代終わり頃まで、ジプシージャズという言葉も音楽ジャンルの呼称も無かったということも、前回書きました。
Django ReinhardtとStephane Grappelliが欧州大戦勃発を機にコンビ解消した1939年を境に、DjangoとStephaneのオール弦楽器ジャズ演奏をフォローする楽団が、スウェーデン、ノルウェー、スイス、イタリア、チリ、アルゼンチンなどの土地で活動し始めたということも、前回書きました。
では、Djangoのホームグラウンド、フランスではどうだったのでしょうか?
ジプシージャズの創始者として、Django ReinhardtやStephane Grappelliの名前を挙げる人が居ますが、それは大間違いだということをあらためてここに書いておきます。
Djangoがジプシー出身のジャズ・ギタリストであるというのは間違いありませんが、早くても1980年代終わり頃までにジプシージャズという括りで呼ばれる音楽ジャンルはありませんでした。Djangoは1953年に亡くなっていますから、没後30年経ってもそんなジャンルは存在しなかったのです。Stephane Grappelliに至っては、ご存知のようにジプシー出身でもありません。
では、ジプシージャズとは何か?に対しての答えを、仁義上、僕は書かなくてはなりません。
Django’s Tiger
Django Reinhardt et le Quintette du Hot Club de France, avec Stéphane Grappelli
31 Jan. 1946 London,
Stéphane Grappelli – vln; Django Reinhardt – g; Jack Llewellyn, Allan Hodgkiss – g; Coleridge Goode – bs;
どうです? いい演奏でしょ? この日と翌日のセッション全9曲は、特にタイトなリズムギターが素晴らしいです。
(僕の推察なので、たぶんですが、)最近のDjangoのフォロワーたちがジプシージャズと称して演奏するバンドのリズムギターはここら辺りをお手本にしているのでは無いでしょうか?特にRosenberg Trio以降のギタートリオ主体のリズムギターはまさにそのように聴こえます。