About Bluegrass Music…
Variety Of Bluegrass Music
狭義のブルーグラス音楽の中にも、いくつかカテゴライズされた演奏スタイルがあります。長谷川なりに、それらのカテゴリーを説明してみました。参考にしてみてください。
(以下のコンテンツは20世紀に書きましたが、21世紀になって、それまでのブルーグラスの枠では考えられないほど演奏スタイルがさらに多様化しています。)
- ソリッドグラス「ソリッドグラス」や「トラッドグラス」という言葉は、1970年代に、「ニューグラス」の対語として使われ始めましたが、現在では少し違う意味で使われます。
1940年代末にBill MonroeやFlatt & Scruggsが始めたブルーグラス音楽の、様式が確立された1950年代の第一世代ブルーグラスバンドをお手本とし、演奏題材も50〜60年代のものを採用することが多い演奏スタイルを「ソリッドグラス」と呼ぶようです。ブルーグラス本来のイディオムとリズムが信条である本格的なサウンドです。
- ニューグラス「ニューグラス」は、1970年代初頭に「Bluegrass Alliance」や「J.D. Crowe & New South」などのバンドが、当時のフォークやロックに演奏題材を求めたために、それまでのブルーグラスとは違うという意味で使われたカテゴリーです。中でも「New Grass Revival」は、この精神をずっと保ち続けたバンドで、80年代後半まで活動を続け、現在のブルーグラス・シーンに大きな影響を与えました。
- トラッドグラス「トラッドグラス」は、古くは、民間伝承曲や民謡をレパートリーに取り入れたStanley BrothersやShenandoah Cut-Upsなどのソリッドグラスバンドのサウンドのことを指しましたが、現在では、「コンポラソリッド」の対語として、単に「伝統的」という意味で使われているようです。
- モダングラスブルーグラス音楽の様式が1950年代に確立された後、1960年代には、第二世代のバンドが数多く輩出しました。彼らは、当時のフーテナニー・ブームやロックンロールの流行に敏感で、バンドのサウンドをアップツーデートに仕上げました。The Osborne BrothersやThe Country Gentlemenがこの代表です。しかしながら、現在活動するバンドの方が「現代的」という意味では、よりモダンであるわけですので、現在では「モダングラス」は死語となっているのではないでしょうか。
- ドーグ(DAWG MUSIC)マンドリン奏者「David Grisman」や彼の先進的な仲間達が、1970年代後半に始めた演奏スタイルです。ボーカルをほぼ廃止し、高度な楽器演奏と複雑なリズム〜コードワークで、アコースティックなジャズを目指しました。しかし、リズムや音階のイディオムはブルーグラス、とりわけフィドル・ミュージックに根差していますので、ブルーグラス特有のドライブ感がジャズとは一線を画しています。西海岸に多いバンドスタイルで、バンジョーが入っていることは珍しいです。
- ジャズグラス1970年代以降のミュージシャンは、音楽的により進んだと見なされるジャズを、自らの音楽に積極的に取り入れようとしてきました。そのひとつの形として、ブルーグラスでは「DAWG MUSIC」がありますが、それとは別に、Western Swingの伝統があるテキサスあたりのミュージシャンが70年代に演奏したのが「ジャズグラス」と呼ばれる演奏スタイルです。典型的なブルーグラスバンドの編成でありながら、もろにジャズ曲とジャズ風の音階に題材を求め、カントリー風のリズムで演奏しました。今は「ジャズグラス」は死語かもしれません。
- コンポラソリッドコンポラとは、コンテンポラリーの略で、新作を意味します。ブルーグラスの歌曲は、元々書き下ろしであったので、コンテンポラリーで括ることは少しおかしいのですが、1990年代以降の新しいバンドで、古くは70年代の「J.D. Crowe & New South」あたりをお手本にしているバンドのサウンドを指すようです。ソリッドが意味するように、リズム的には伝統的なものを踏襲していますが、ボーカルは90年代カントリーと同じ唄い方をし、ギターやドブロのソロがやたらとフューチャーされるのが特徴です。