About Banjo
Banjo Pickin’ Style
バンジョーの弾き方は一種類ではなく、音楽や楽器の種類によって違います。ここでは代表的な奏法について説明します。
- Finger Picking Styleフィンガー・スタイルは、フラットピックで掻き鳴らす奏法ではなく、指で弾く奏法です。近代バンジョーが元々5弦の楽器として完成されたことから、バンジョーの奏法として、右手の数本の指を用いた方法が古くから完成されていたことは想像に難くありません。5弦バンジョーの現代の代表的なフィンガー・スタイルは大きく分けて、スクラッグス・スタイル(スリーフィンガー)とクローハンマー(フレイリング)という2種類があります。
- Scruggs Styleスクラッグス・スタイルは、宗家Earl Scruggsが、彼以前の混沌とした奏法をまとめ上げたスタイルで、ブルーグラスのバンジョー奏者は全てこの奏法をフォローしています。左手のスライドやプリング・オフ、ハンマリングを最大限に利用してメロディを分散和音の中に取り込み、シンコペーションの効いた演奏をします。チョーキングも効果的に使われます。
- Melodic Styleメロディック・スタイル(或いはクロマチック・スタイル)は、Bill KeithやBobby Thompsonといったプレイヤーがスクラッグス・スタイルを元に考案し紹介したスタイルです。スクラッグス・スタイルのロールを踏襲し、同じ弦を続けて弾くことはありませんが、分散和音ではなく全ての単音がメロディとなります。スライドやプリング・オフ、ハンマリングを極力使わず、サウンド的にはピアノのペダルを踏んだ状態と同じです。
- Single String Styleシングルストリングは、同じ弦を続けて弾くことを許容し、ギターやマンドリンの単弦メロディを模倣する奏法です。メロディック・スタイルと同じく、全ての音がメロディとなりますが、こちらはピアノのペダルを踏まない状態に近く、リズミックな演奏ができます。Don RenoやEddie Adcock、最近ではBela Fleckが使い手として有名です。
- Gallopping Styleギャロッピングは、Chet AtkinsやMerle Travisのギター・スタイルをバンジョーで模倣したスタイルで、Eddie Adcockが始めました。開放弦や5弦を使うことがほとんどありませんが、4ビートぽいリズムに載せた演奏は効果的です。
- Clawhammerクローハンマー(或いはフレイリング)は、ピック類を使わずに親指以外は指の腹ではなく爪の背で弦を叩く奏法です。ローカルな伝承スタイルですから細分化することは困難です。人差し指(或いは中指)でアフタービートにアクセントを付けますが、その時に主に1弦を叩くのがクローハンマー、1〜3弦をブラッシュするのがフレイリングというように大きく分けられます。基本的に親指はメロディを弾くことは無く、裏拍の装飾音を弾きます。この装飾音は5弦ばかりを使うことが多いですが、2〜4弦を使う場合はドロップサムと呼ばれ、複雑なリズムを奏でることができます。スリーフィンガーのメロディック・スタイルのような演奏をするプレイヤーも居るようです。
- Basic Strumベーシックストラムは、フレイリングと同じような譜割りですが、爪の背で弦を叩くのではなく、普通に腹側でつま弾く奏法です。山地のローカルな伝承スタイルであったかもしれませんが、民謡復興(フーテナニー)ブームの頃にPete Seegerあたりが普及させたようです。ピックは着ける場合と着けない場合があります。
- Double Thumbingダブルサミングは、親指と人差し指のみを使う、俗に言うツーフィンガー・スタイルです。元々は山地のローカルなスタイルとして伝承されていたようです。その名の通り、親指がメロディ音と5弦を一回おきに鳴らし、人差し指は主に1弦のみを鳴らします。スクラッグス・スタイルの原型とも考えられます。
- Flat Picking Styleフラットピッキンッグは、古いジャズやジャイブ、ジャグバンドなどのジャンルのバンジョーで使われる奏法で、ギターやマンドリンのそれと同じものです。この奏法を用いる場合、主に4弦バンジョー(テナー or プレクトラム)が使われますが、これは元々マンドリンやギター奏者の要望から開発された楽器で、フラットピックを用いた演奏をするのに向いているためです。
- Chord Stroke Styleコードストロークは、コードを押さえ、複数弦をかき鳴らすおなじみの奏法です。コンボのリズム楽器として演奏する場合は、シンプルに強拍をダウンストロークのみで演奏しますが、演奏家によっては裏拍(弱拍)をアップストロークで入れる場合もあり、ピッキングの強弱でアクセントやシンコペーションを表現します。メロディ・ソロはコードのトップノート(一番高い音)をメロディに見立てて強調し、コードフォームの移動に依ってメロディを歌います。3連譜やシンコペーション、コードフォームごとのスライドなどでメロディやリズムの装飾を行います。
- Single String Styleシングルストリングは、一本の弦のみをクロスピッキング(アップ・ダウン・ピッキングの繰り返し)してメロディを弾く奏法です。ギターやマンドリンのそれと同じです。コードストロークに較べて音量が出ませんので、コンボの中で演奏するよりも、バンジョーバンドで聞くことが多いです。
- Tremoro Pickingトレモロは、一本或いは複数の弦を素早いクロスピッキング(アップ・ダウン・ピッキングの繰り返し)の連続でメロディを弾くマンドリンなどで多用される奏法です。3連、4連、6連、8連など、自在かつ正確な譜割りでピッキングし、ピッキングの連続的な強弱でメロディに表情を付けます。スローテンポの曲でメロディを歌う場合に使うことがあります。ルパートのカデンツなどではコードストロークとして、このトレモロを行うこともあります。